知性がない

なけなしの知性で生き延びていこうな

最近読んだ本

先週読んだ本です

やがて君になる 2巻

とてもつらくてよかった。どうなっても二人ともが幸せになれないカップル(しかし人物としては幸せになってほしいほどいい人!)を眺めるのは非常に良い気分になる。

適度に甘くて、それでつらい話なのがうれしい。心理描写がやっぱりすごく良くて、主人公の侑が先輩を試そうとして、結局自分が折れることになるみたいなシーンがあるのだけど、その言葉の、言いよどみさえしびれるように聞こえてくるようなコマ割りといい描き方といいほんとうに上手い。もうここまできたら先輩がこっぴどく振られてほしい。先輩のつらい顔が見たい。

表紙も秀逸で、恋愛感情がわからない侑が日陰にいて、それがわかる先輩が侑を日向に引っ張りだそうとしているんですよね。上手いんですよ全て。

ぼくは書きたいのに、出てくるのは泡ばかり

ぼくは書きたいのに、出てくるのは泡ばかり―ペドロ・シモセ詩集

ぼくは書きたいのに、出てくるのは泡ばかり―ペドロ・シモセ詩集

日系スペイン人の詩集の翻訳。

とても美しい詩ではあるが、途中で交通事故で死にかけた辺りから、 かなり意識的に性的な表現を使い始めたようだ。死を前にして性の側に寄っていくというのはとてもよくある話だが、あまりにも露骨でその上で美しく描こうとしているので、めまいのするような感覚だった。

窒息した言葉

窒息した言葉

窒息した言葉

強制収容所で親を殺された娘が書いた本。この人はとても頭が良くて、それで、親がいた場所、その想像のつかなさについて書いているのだが、その重さ、その考えのつかなさをどれだけ考えてもそこには辿り着けない想像のつかなさがあるし、結局この作者は自殺してしまう。

生き残ってしまうことと、それでいて正気を保って自殺しないでいることとはどういうことなのか。想像を絶していることが起こっていて、その場に自分の両親が居たというのに、本当に何が起こっていたのかは、どれだけ説明されても本当にわかったことにはならないからつらいし、きっと理解が届かないからこそ、生き残りは正気で居られるんだろうと思う。けど、それが他人事にできない立場になってしまえば、もうどうしようもないし、本人がその出来事を他人事にできるようになるしか救われないし、死んでしまったらもう天国を用意するしか生き残りも生きられないよな、と思う。まだ私にはうまく読めない本だし、きっといつまで経っても上手く読めなさそうだ。

予告された殺人の記録

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

表紙がとても狂気じみていてよい。ガルシアマルケスはいい!

ただこの作品は、百年の孤独に比べるとガルシア=マルケスの良さがあまり出ていないように思う。 ガルシアマルケスの文体は、すごく重要だったり変なことが起こっていることをさらっと書いてしまい、それが不思議な浮遊感を生んでいるのだが、今回は、起こっている事件がリアル調で、そんなに変なことは起こらない、むしろ変にすることに失敗している?ので、これ読むなら百年の孤独読むかなーーーというかんじ。

醜聞の作法

醜聞の作法 (講談社文庫)

醜聞の作法 (講談社文庫)

佐藤亜紀の小説は、登場人物がとても頭がいい。

物語に振り回されるというより自ら動いて物語を振り回しているように見えて、とても強い用に思える。 この本は、中世フランスの、うわさ話に飢えた民衆と、それを利用して物事を自分の有利に進めようとする貴族、そしてスキャンダラスなリーフレットを書く羽目になった文書家と、貴族と物書きを仲介する胡散臭い男、莫大な富を生み出す彼らを狙う人々、など様々に人が出てくるが、どいつもこいつも曲者で、全然いい奴じゃなくて、それでいてかっこいいのだ。

ジェネラティブ・アート

[普及版]ジェネラティブ・アート―Processingによる実践ガイド

[普及版]ジェネラティブ・アート―Processingによる実践ガイド

  • 作者: マット・ピアソン,Matt Pearson,久保田晃弘,沖啓介
  • 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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processing本。 こういう本は絵本になりがちで実際使えるかというと微妙なものが多いが、これはノイズとの遊び方という点で絞られているのでとても楽しく読めて、実践的だった。まず下手くそな線をプログラムで生成するところから始まる(この時点でいい!