知性がない

なけなしの知性で生き延びていこうな

語彙力を失うオタク、絶句に抵抗する

 これは「虚無とたたかう」アドベントカレンダー8日目の記事です。

 今日は語ることで虚無とたたかう例としてオタクの話をします。

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 なぜオタクは、強大な萌えに遭遇した時、ヤバい……とか無理……とか語彙力を失った、とか言うのだろうか。

 語彙力を失うオタクは結局なにも語ってないじゃないか、というのは大間違いだ。

 語彙力を失うオタクは「語彙力を失った」と発話することで、いかに大きな感情が襲ってきたかを示しているのである。

 本当に全ての語彙力を失ったなら語彙とかいう語彙もなくなるはずで、そのときは、オタクは単に絶句して、言葉が戻ってくるまで待たなければならない。

 「語彙力を失った」という言葉は、いわば絶句と語りの間のセーフティーネットとして機能しているのだ。

 そして重要なのは、これはどこかの人間(や猫やぬいぐるみやソーシャルメディアのタイムライン)に向かって発話されることだ。何もないところに向かって話し続けることに耐えられる人はあまり居ない。(耐えられるのはわりと特殊技能で、わりと役に立つ。授業とかの)

 誰かが「わかる無理」とか返すことで、オタクは圧倒的な現実、それに相対した自己の虚ろさから言語の世界に戻って来れる。そしてまた次の萌えを語ることができる。

 明日は@kdxuと対談をする予定です。お楽しみに。

2017/12/11 対談はしなかったけど書きました

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