知性がない

なけなしの知性で生き延びていこうな

「ヤバい発見」アドベントカレンダー始めます

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今年も一人アドベントカレンダーやります。

2018年は私の人生において発見が多い年だったので、今年のテーマは「ヤバい発見」です。

ちなみに怪獣歌会でも楽しい企画をやる予定なので、こちらも要チェックだ

怪獣歌会 (@quaijiu) | Twitter

以下のリストはアドベントカレンダー予報です。おたのしみに。

  • 散歩の快楽

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  • 脳がいい時悪い時
  • コンテンツを世に放つと思い出が重層化する
  • 冷凍ブルーベリー
  • 2018年のクソ良かったもの
  • デザインという語の拡大解釈
  • 2018年にされて良かった質問ランキング
  • アイデンティティでなくパフォーマティブ
  • でかい絵がマジでやばい
  • 壁に貼って考える
  • 資本主義の力を借りる
  • クソいい椅子
  • フィードを鍛えインターネットを耕す
  • 2018年買って良かったもの
  • Reactおろかエピソード
  • 感情と言語について
  • 年上がみんな勉強家に見える
  • 唯物論者って人が死んだらどうするの?

※この記事は「ヤバい発見」アドベントカレンダー1日目の記事です。

最近面白かったもの

f:id:kinakobooster:20180603235616j:plain### 自作キーボード

部品を集めて自分ではんだ付けして作るキーボードの世界があって、 最近はずっとそれにかまけていた。

なかなかきれいに作れてたのしい。

キーボード沼からなめらかに接続する入力方式沼というのもあり、いまは見事にそれにはまっています。

(このエントリはIrisでNICOLA配列で入力しています)

ゲーム史

1972年のPONGから

www.youtube.com

46年後のいまこうなってるもんな。

www.youtube.com

技術の進化意味分かんないね……

短歌

友人に、君はなぜ短歌を作るのかと聞かれて、「存在しない記憶のために書いてる」と口に出した自分が少し面白かった。

存在しない記憶とはまあフィクションのことなんだけど、たとえばこの辺を見てもらえばなんとなくわかってもらええるかもしれない。

雪まみれの頭をふってきみはもう絶対泣かない機械となりぬ  飯田有子

春だねと言えば名前を呼ばれたと思った犬が近寄ってくる  服部真理子

自販機へのぼる誰もがつま先をお釣りの穴にいったん入れて  伊舎堂仁

最後のとかすごくて、べつに自販機とか登ったことなくても、登っている人すら見たことないのに、なぜかその光景が想像できてしまう謎説得力がある。

記憶ですらない、よくわからない脳のもやもやしたところに言葉が引っかかって、エモい情景が展開されてしまうわけだ。

私はまだ見ぬ嘘をなんとか言葉で結晶化させて、誰かの脳で生きながらえさせたいのかもしれない。

(短歌の引用はこちらより)

短歌タイムカプセル

短歌タイムカプセル

つらくなくなっちまったらどうする?——つらさとアイデンティティを混同しないで生存する

 これは「虚無とたたかう」アドベントカレンダー最終日の記事です。

 人はいつまでも虚無とはたたかえない。

 ふと気づくとあんなに辛かった、ずっとたたかっていたはずの何かが薄れ、焦りが薄れ、もはや関心をひかないことになっていることもある。生活に追われて虚無どころでなくなることもあるだろう。

 それならそれでいいんだと思う。虚無とのたたかいを必要としない時期まで生き延びたということだから。

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 それでも自分のつらさをアイデンティティにしちゃってると、つらくない自分に不安を覚えるかもしれない。

 精神科医中井久夫は、統合失調症の治りかけの人に、「寂しくなるよ、ただのひとになっちゃうんだよ。それでも大丈夫?」と聞くという。どれだけ症状がつらくとも、そこには何かしらの特別がある。

 虚無には人を魅惑する何かがある。そこから逃れるのは簡単なことではない。

アリアドネからの糸

アリアドネからの糸

 つらさとたたかうのは非常に体力をつかうことで、実際つらいとそれしかなくなるときもある。

 けれどもいつまでも同じ強度でつらいわけではないから、死ぬのは勘弁してやってほしい。

 「虚無とたたかう」アドベントカレンダーはこれで終わりです。大変だったけれど、これを書いている間は虚無ではなかったよ。

 1日目が目次になっていてそこから好きな記事へ飛べます。おすすめは異性愛者破滅です。なんて並びだ。

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 気に入ってくれた人、私に感想やいいものをもらえるとうれしいです。。

 ほしいものリストはこちらです。

 感想は@kinakoboosterまで。

 以下はアドベントカレンダーのどこかで使おうと思ってたけど結局削ったNGフレーズ集です。何かに使ってくれてもいいですよ。

  • 自分は自分のことなんとかやってると思ってるけど実際は光の乏しい環境で育って変な形に曲がった木のようなものだ。ねじ曲がっていて、いまさらそれを直すこともできない。しかしそれに気づかないフリをして生存することには意味がある。気がする。意味ってなんだ。虚無とは。

  • わかりあえない人同士もわかりあわないままに一緒にやるってのが多様性ってやつなんじゃないか。

  • 人から物をもらうとする。もらってしまった。もらってしまったからにはお返しをしなくてはならない。贈与によって負い目が生まれ権力関係が生まれてしまった。しかしこんなこと考えても利用されるばっかりだ。ただ受け取ったらありがとうってヘラヘラしてればいい。あげられる人があげられる時に貰えばいいのだから。

ホモソを避けてヘラヘラ集う

これは「虚無とたたかう」アドベントカレンダー17日目の記事です。

今日はホモソーシャル(ホモソ)の話をします。

今日のまとめ

  • ホモソーシャルは排除によって成り立っているのでつらい
  • なにかをやろうとするとホモソの壁にぶつかるのでそれもつらい
  • すでにある権力を避けるにはヘラヘラするしかない

ホモソーシャルとは

 ホモソーシャルとは何か。ゲイの社会のことではないよ。もともと社会学の用語で、同質の人が集まっている社会を指す。悪口で言うときは、女性蔑視と同性愛嫌悪によって成り立ってる世界を指します。まあ男子校ノリのことだな。セジウィックが言ってるアレです。

男同士の絆―イギリス文学とホモソーシャルな欲望

男同士の絆―イギリス文学とホモソーシャルな欲望

ホモソがつらい

 このホモソがつらいってのは、片方の性をおとしめることでプライドを成り立たせてる構造がつらいってことね。それ差別じゃんっていう。

 私がかつてバイトしていた会社にはめちゃくちゃできる女の人が取引先に行ってきたときに「身体売ってきたの?」って言っちゃう偉いおじさんが居たよ。それでゲラゲラ笑わなかったやつは仲間にしてやらない風潮があった。わざわざ言うまでもなく最悪だよな。私はその瞬間ちゃんと怒れなかったことを今でも後悔している。

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ホモソの壁、ガラスの天井

 テレビつけたらわかるけど日本では権力の上の方までホモソ男性でぎっしりです。そこで一緒になって女性蔑視や同性愛嫌悪をやれば出世階段を登れる。偉い人ってかなりおっさんばっかりでしょ? でも誰でもおっさんになれるわけではないよね。多く見積もって人口の半分ぐらいだよ。名誉男性枠とかあるけどさ、(要するに女性だけど「女性」ではないように扱われ、おっさんたちと一緒に女性蔑視をやる枠だよ。詳しくはググったり身近なフェミニストに聞いてみてね)それでも、そんなんつらいよ!

 いろんなことをやるためにはお金や権力が必要で、でもこれがたくさんほしくなると、どうしても人間と関わる必要がある。そして、このホモソの壁にぶつかるんだよな。

 すでに世にホモソの権力がある中で、どう生存すりゃいいんだ。

 差別をやる側にも回らず、それでいて差別されるのも嫌なんだったら。

権力構造から逃れたい

 人が言語をやってると、そこにはすでに権力がある。言語に権力構造が埋め込まれていると言えばいいのかな。例えばただ単に「王様」といったらそれはだいたい男性を指す。女の王様の場合はわざわざ「女」王って言うよね。

 人間が二人いればそこに権力が出てくるのはわかるよ。けれどむしろたった一人で考えてるときすら、権力からは自由ではない。ヒエ〜人間は虚無からも権力からも逃げられないのか〜!

 だから小説家や詩人とかの言語をかき乱す仕事は、権力をかき乱す仕事にもなる、みたいな話もある。けれどもこの話は私もまだ勉強中なので興味がある人はクィア理論とかで調べてみてください。

クイア・スタディーズ (思考のフロンティア)

クイア・スタディーズ (思考のフロンティア)

この本良かったけどプレミア付いてるな。

 権力からはどうも逃れられないのだとしたら、もうヘラヘラするしかないんじゃないか。お前のホモソなんて知らねえ、こっちはこっちで生き延びるぜって。でもホモソ以外のとこって全然金ないんだよなあ。困ったね。

権力にのるかそるかでなく、権力の横に逃げる。

 ある権力があって、そこに横があるのかもよくわからないけれど、ヘラヘラヌルヌル生き延びてたら生き残り同士で集まって別の権力をやれるんじゃないか。たったひとつの大きい権力でなく、小さい権力がたくさんあった方がよい世界に思える。選択の余地があったほうがいいと私は信じているので。

 けれども小さい権力を支えてるのはより大きくて見えづらい権力だったりする。ハイパーニッチな趣味人同士がつながれてるのは検索エンジンのおかげなんだけど、検索エンジンやってるのはでかい企業だからな。潔癖症には生きづらいな!

 虚無とたたかっていたら権力の闇に頭を突っ込んでしまった。

 明日はラストですね。「つらくなくなっちまったらどうする?」って話をします。

2017/12/26 終わりました

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自分の破滅を生きる

 これは「虚無とたたかう」アドベントカレンダー16日目の記事です。

 今日は破滅の話をします。
 破滅といっても小規模にやるやつと大規模にやるやつと二種類あるけど、大規模なのはもううんざりでしょう、小規模にやるやつについて喋ります。

破滅とは

 人生、破滅してますか、してませんか。破滅してるやつらはこんなブログ読んだりしないか。破滅するならするで良いのだけど(良くないか)。
 人は大体破滅しきれなくて人生を続けている。過激な人ならそんな人生なんて惰性だと吐き捨てるかもしれない。人生が続くにも理由があって、破滅をやらないにも才覚がいるけれど破滅をやるにはもっと才覚がいる。

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 そもそも破滅とはなんだろうか。
 辞書を引けば、破滅とは「ほろびること。人格・家・国家などが成り立たなくなること。滅亡。」とある。人生を棒に振る、身を滅ぼすということか。

破滅(ハメツ)とは - コトバンク

 破滅は大体はなにかを放棄し、逃げ出すことから生まれる。眠剤かきこんだり、意識が混濁するまで酒を飲んだり、辛いとわかっていながらツイッターで喧嘩を売りまくったりね。これ以上並べ立てはしないけれど、人それぞれの無数の破滅が存在している。

破滅をやる理由

 なぜ人生を放棄するのか。その人の中ではすでに人生が棒に振られていると認識しているからだ。何かができなかったことによって人は自分の人生を捨てられたものと感じる。棒に振られた人生、どうしようもない人生。だから破滅をやる。そうすれば「この人生」でなく、どこか外側の景色が見られるかもしれないから。虚無と向き合い続けなくてもいいから。
 そんなの現実逃避じゃないかと言われればたしかにそうだ。けれど、どうだろうか。現実逃避でない生がありうるだろうか。破滅をやろうがやるまいが、人生の責任(と本人が思っているもの)を果たそうと果たさなくとも、虚無はそこにある。

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虚無とは今日の続きが延々と続く苦しみであり、破滅は虚無との(うまくいくことのない)たたかいである。
 酒を飲み続ける奴は酩酊することで現実を乗り切ろうとしている。TLを更新し続ける奴らは世界の外側を見せてくれる何かが流れてくることを期待している。全てを放棄して何かをやりつづけること自体が破滅ではあるけれど、それ自体が虚無とのたたかいである。

誰かの破滅、自分の破滅

 虚無のとのたたかい方は色々あるけれど、自分と違う方法で虚無とたたかっている人は破滅しつつある人と見分けがつくだろうか。
 毎日仕事に行っている人から見れば毎晩シコシコ怪しいブログを書いている人は狂気をわざわざ覗き込みに行く酔狂だし、夢を追っている人からみれば仕事でクソみたいに拘束されている人は脳をダメにしているように見える。

 人生のレールに乗って親となることをゴールだと考えている人から見れば結婚をしない人は緩やかに滅びに向かっているように見えるだろうけど、そうでない人からみれば権力構造のなかで役割を与えられる人生なんて破滅でしかない。

 人は虚無を回避することができない以上破滅を回避することもできない。人生が失われることに抵抗したいなら戦略的に破滅をやるしかない。

 と、こう口で言うのは簡単だけど私もその方法を探している。逃げずにうまいことレールに乗ることすら難しいのにね。
 たぶん、自分のためだけでなく、他人の虚無とまでたたかえるとよくて、それをやるには社会や言語について知る必要がある。

 脳を良くしてよく学んでよく考えるしかないってことです。うまいこと破滅していこう。

 

明日はホモソーシャルの話をする予定です。

2017/12/24 メリークリスマス。しました

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