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知性がない

なけなしの知性で生き延びていこうな

青春の日陰者の話「やがて君になる」

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激ヤバサイコー百合漫画なので読んだことない人向けに何がすごいのか書く。

青春マンガの幸せな時代

長い間、青春マンガというものは、そのつらさの本質をモテないことに置いていた。

地味でイケてないからモテなくてつらい、オタクで誰にも振り向いてもらえないからイケてなくてモテない、モテないのが辛いから、恋人ができたらそこでゴール。

そんな恋愛漫画はあまりにもたくさんあったし、わざわざ例をあげるまでもないだろう。

イケてる奴になってモテて、告白が成功すればそれでハッピーエンドに雪崩れこめてしまうのだ。

もちろんこれがいいとか悪いとかではない。無邪気に恋愛ばんざーいが恋しくならないときがないとは言わない。

だが、この漫画は、それとは違う。

完全に恋愛に興味のない女がメインの『ケンガイ』や、「興味のない人から向けられる好意ほど 気持ちの悪いものってないでしょう?」という伝説のセリフで有名な『クズの本懐』など、ただ単にちやほやされて気持ちいい!うれしい!とはならない漫画がでてきた近年、ついに『やがて君になる』が出てきた。 幸せな時代だ。私は1巻の一話で完全に持って行かれたのでその話をする。 *1

これを読んだほうがいい人

  • 後述する「青春の日陰者」だった人
  • 心理描写がしっかりした百合漫画が大好きな人
  • 百合であることに意味がある百合漫画を読みたい人
  • 面白いものを探している人

「日陰者はハッピーに恋愛をできるのか?」

この漫画は、高校生の「日陰者」が主人公だ。

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主人公の侑、かわいい

日陰者といっても、モテないとか、かわいくないとかすごいコミュ症だとかそういうことではない。ただ、「恋愛という感情がわからない」。それだけだ。しかしたったそれだけで、高校というきらきらした恋の話があふれる空間で、自分を日陰者にしてしまうには充分なのだ。実際に、漫画中でも、恋愛が分かる人は光の中、それがわからない侑は影の中にいる演出が多い。

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この漫画のすごいところは、その日陰者、「ただ恋愛感情がわからなくて、それでいてそれがわからない自分を未熟だと思っている」主人公、侑を安易にラブってサイコーですよね!という感じで救ってしまわないことだ。

1巻第1話にして、この侑は、誰にでも好かれるような生徒会候補、橙子先輩に告白されてしまう。その告白される理由も、しっかりと(つらい)理由があって最高なのだが、ここで素晴らしいのが、侑は先輩にそう簡単にときめいて、恋愛感情をわかることができない!ということなのだ。

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その辺の恋愛物なら、普通にクライマックスみたいなシーンで「この人が何を言っているのか わからない」と言っている非常にクールなシーン

この恋愛感情がわからないというつらさから逃げることなく、そのつらさをじっくり描くことにした漫画が、良くないわけが無い!

愛がわからない、ピンと来ないみたいなのは、男女モノだと、俺がわからせてやるよ……(紆余曲折あってラブがわかりましたよかったね!)みたいなのが多く、ジェンダー権力を感じて気分よく読むことができないが、これは百合物で、権力男も出てきそうにない。出てくるのは(押しの強くて)素敵な先輩ぐらいだ。

もうすこしジェンダー圧力の少ない幸せな世界なら、きっと男女モノでもこれと似たテーマの作品を読むことができるだろう、だが現代では、百合漫画だからこそこの距離感を描くことができる。 百合であることに必然性があることは、本当に稀有で美しくて最高でそしてつらい話なのだ!*2

恋愛なんてピンとこなくてもいいし、そのまま先輩が振られてもいいし、振られなくてもいいけど安易に報われるのはつまんないよねみたいな心情で楽しく読むことができる!*3

かなり難しくつらい話をキャッチーに可愛くそしてアツく描いていて非常に良いのでみんな読んだほうがいいよ。

キャプチャは全て公式サイトの試し読みからです。

kindleで買えばすぐ読めるし読んだほうが良さそうだと思ったらすぐ読んだほうがいいと思うよ!

*1:既刊2巻だが、ここでは、1巻についての話しかしない。言うべきことが多すぎるから!

*2: 激しい言い方を許して欲しい。われわれはあらゆる関係の劣化コピーにすぎないような百合カップルを、あまりにも多く見てきてしまったのだ。

*3:2巻の感想にも書いたけど、もはや先輩の自分が素敵であることがわかっていて、素敵なままで居ようとするのが辛くてしょうがないので、もうこっぴどく振られてほしい。きっとみんな救われるのもその後だろうし。