知性がない

なけなしの知性で生き延びていこうな

「どう命を取り押さえるかだよね」『吉増剛造自伝 素手で焔をつかみとれ!』

どう命を取り押さえるかだよね

(『吉増剛造自伝 素手で焔をつかみとれ!』kindle版 位置1065)

焦らなくてもいいとよく言われる。

焦らなくてもいい、焦ってもどうしようもないし、事故が増えるだけだし、早死する。まあ正しい。毎日こんなことしてていいんだろうかと焦っているよりは、焦ってなくて毎日同じ場所に通ってなんやらしている方が、日々を暮らすには都合がいい。

しかしこの吉増剛造という人はどうだろうか。非常時性と本人は言っているが、焦ったままで、勢いで、力でしかないような詩を残し、77歳になって愉快な自伝を残している。

紋切り型のぺらぺらの言葉より、こっちの自伝の言葉の方が、もしかすると救いになるかもしれない。自分の魂に申し訳がないと、焦ったままで生きている人だから。

読んだほうがいい人

  • 自分が30まで生き延びれるか不安に思っている人
  • とにかく辛い人
  • いつも謎の焦りを感じている人

この本について

この本は、吉増剛造という人の自伝で、本人が人生を振り返って語るインタビューの形式で書かれている。

吉増剛造という人は詩人で、とにかく切迫感のある詩を書く。

下に引用するが、とにかくその音の響きを感じてみてほしい。

黄金 詩篇

おれは署名した

夢…… と ペンで額に彫りこむように

あとは純白、 透明 あとは純白

完璧な自由

ああ 下北沢裂くべし、下北沢不吉、 日常久しく恐怖が芽生える、 なぜ下北沢、 なぜ

早朝はモーツァルト

信じられないようなしぐさでシーツに恋愛詩を書く

あとは純白、透明

完璧な自由

純白の衣つけて死の影像が近づく

純白の列車、単調な旋律

およそ数千の死、数千の扉

恐るべき全身感 おれは感覚を見た! (以下省略)

自伝は時系列順ではない。本人の印象的だった出来事や、考えていたことからどんどん記憶が引き出されるように、思い出して喋っているかのように書かれている。語り口は自然で、実にアッケカランとしている。

幼少期、戦争の頃の話をするときも、

とにかく金はないし、親たちもどうしたらいいかわかんなくて。言ってたもんな、親たちが。戦争の頃はこの子たちが邪魔だから捨てて山へ逃げようかしらなんて考えたのよ、なんて(笑)。捨てられるところだった。ひどいこと言うよな(笑)。*1

と、全編この感じのノリで、晩年まで生き延びた人の持つふしぎな明るさがある。

辛かったころは過ぎ去ったからこそ、こんなにもさっぱりとしていられるんだろうかとも思う。

非常時性、危険な集中

政治性というのがまったくダメ、というわけでもないんですけどね。でもそれよりも、本当に大きなビジョンが得られたなら、非常時性と実存と火の玉性みたいなぎりぎりのところまで行かないと、自分の魂に対して申し訳がないという思いのほうが強いんですよね。*2

吉増剛造の詩のもつ切迫感は一体何なのか。

吉増には、若いころ4年ほど会社員をやった時期がある。詩と講演で食えそうになってスパっとやめたそうだが、当然だろう。

ぎりぎりのところまでいかないと自分の魂に対して申し訳がないなんて言える人が、社会で生きやすいわけがない。

吉増剛造の詩を読んでいると、とにかく詩を書くしかなかったんだ、という、締め切りやら焦燥やらで火の玉のようになって、イタコみたいになって言葉を探すこと。そんな状態でぐわーーっと書くからこそ、たどりつける表現があるように見える。

そしてその集中でもって書かれた詩に、うっかり救われてしまう人は少なくないと思う。

チクセントミハイのいうフロー体験が、集中の最上の形としては有名だ。この状態になると人は物事に完全に入り込み、時間が立つのも忘れて没頭し、その集中の中では全てが上手くいくという。

走り回る子どもは非常に狭い視野のなかで、ただ追いかけっこをすることが面白くて、他のどんな雑念にも惑わされずに飛び回っている。多分、この状態がフローに近い。このフローは多幸感をもたらし、これこそが人生の意味だという人もいる。

しかし、吉増の言っている火の玉みたいな状態は、これとはだいぶ空気が違う。ほんとうのほんとうに集中してしまうことは、たぶん、怖いものなんだと思う。

「書くことのほとんど狂気」「手と耳と目と口とで、ある特殊な、シャーマンよりももう少し進んだ状態に持っていく」*3と本人は言っているが、多分もっと昔の人はミューズ(詩の女神)が降りたとかそういう言い方をしたんだろうと思う。

ニーチェの言う、「深淵を覗き込むものは、用心するが良い。深淵もまた、お前のことを覗き込んでいるのだから」という警句にもあるように、あまりに深い集中は、生命を燃やすような集中は、時に破滅をもたらす。*4

ここに行くまでは良くても、戻ってこれないと疲れてしまうしきつい。狂気の世界だから。

ぎりぎりのところまで行く集中ができるというだけで、私などは羨ましくて仕方がないんだが。でもこれはきっと、狂気に対抗する言語をもっていないといけなくて、頭ぐわーーーとなったときに「彫刻刀が朝狂って立ち上がる」*5みたいな言葉がぽんとでてくれば助かる。出てこないとたぶん戻ってこれない。

でもこれを意図的に起こすこと、その狂気を追い求めているのが吉増の詩で、やっぱりそれはすごいし、安心してひきこもれる場所がないとそれはできなくて、まあこんな奴が会社員を続けられるわけがないな、と思う。

締め切りのたびに非常時だ!と、かあーっと別人のようになってやるみたいなことを続けていたが、晩年にそれ無しで一旦やっていこうと、吉本隆明の文章をかなで書き写しまくったり、終わったあともう一度同じ文章を書き写したりするのもいい。

非常時性を保ったまま生き延びる

やっぱりこんな火の玉、非常時、なんて言っている人が、こんな歳*6にもなってそれを笑いながら話しているというのが、もう救いでしかありえなくて、

僕なんかはほっといたら恐らく三十幾つで死んでたでしょうね。そういうふうだからさ。だから田村隆一さんがよく言ってたよ、「目つり上がっちゃって、あいつ、マリリアと会わなきゃ死んでるぜ」って(笑)。じつに正確だな。*7

とか、

それでアイオワ大の国際創作科の手伝いなんかを学生でやってたときに僕と出会ったわけね。それでこういう関係になったんだけども、僕はその、頭のいい言葉がよくできるラテン系のそんな人と違って、毒虫みたいにして受動的統合失調症と引きこもりが専門みたいなやつじゃない(笑)。それが詩のエネルギーだったからさ。それが一緒になっちゃった。ほっとけばもう死んじゃってたようなタイプだろうな。それが世界に向かって開くような女の人と一緒になった。それによって僕自身がマリリアさんとの関係で、単純にこの人を利用するというわけじゃなくて、お互いの治外法権というかな、お互いの単身性――独身性と言っちゃいけない。単身性を尊重するような、そういう関係を結果的には築いた。*8

とまたアッケカランと言っているのがまた良い。

マリリアはブラジル人で、6か国語ペラペラでラテン語を教える教師をやっていた歌手で、とにかく外向きのエネルギーにあふれていた人のようで、そんな人と吉増のような「毒虫みたいにして受動的統合失調症と引きこもりが専門みたいなやつ」が一緒になったからこそ、生き延びられたと言っている。

正反対だけどがっちり気が合う人と二人で共同体をつくって、それで一緒に生き延びたっていうのもいい。

そこにはもちろん恋も愛もあったかもしれないが、そこで添い遂げて生き延びてしまえば、そんなに単純なものでもなくなるんだろうなと思う。

吉増剛造展でみたもの

展覧会「声ノマ」に行ったのはこの伝記を読み終える前だったのだが、そこには生原稿を展示しているスペースがあった。

それは例の、晩年の締め切りではない方法で作ったという「怪物君」のものだった。

米粒みたいな字を目を凝らしてよく見ると、原稿の中の・・・に赤字を入れて、・・・・・・にしていた。

点の数、とにかく重要なんだなと、それを見てなぜか嬉しくなったことを覚えている。

晩年になってなお、新しい試みを続けて狂気スレスレの集中をし続けている、そういう存在が生きていてくれていることが嬉しいし、多分そこまで行ければ人生捨てたもんじゃないって言えるんだろうなと思った。

伝記、謎の元気が出るのでぜひ読んでほしい。

吉増剛造詩集 (ハルキ文庫)

吉増剛造詩集 (ハルキ文庫)

*1:位置448

*2:位置1893

*3:位置2595

*4:瞑想もやりすぎると、戻ってこれなくなって危険だという

*5:「朝狂って」の一節

*6:2016年時点で77歳だ

*7:位置2425

*8:位置2350

空っぽの男が虚無のまま死ぬ!--ウェルベック『プラットフォーム』

この『プラットフォーム』の主人公は、虚無な男だ。

この主人公には本当にうんざりで、人生は空っぽだし、女と見るやセックスのことしか考えない。買春に生きがいを見つけているがそれも虚無だ。

小説は長く、半分ぐらいは退屈で、激しくて露骨でやたら長いセックスの描写ですら息抜きになる。

まあその退屈と虚無と自分の人生がどれぐらい違うかと聞かれると、わからなくなってくるし、だからこそ、虚無だとわかっていてもこの小説を最後まで読んだのかもしれない。

装丁はやたらかっこいい。さすが河出文庫だ。

虚無人間を表現するという芸術

虚無虚無言って、面白くないとか、好きな場所が少しもなかったかというとそんなことはない。

冒頭近く(ここからすでにうんざりで、女が出てくるまで話はものすごく退屈だ!)、この主人公が虚無だとはっきりわかる瞬間だ。主人公が、窓口で出会っただけの女に、クイズショーの話をしようとするのだ。

このワンシーンだけで、この男が、普段話す相手もほとんど居らず、仕事から帰ってきたらクイズショーを見るしかすることがなく、そして相手の反応も考えずその話しかできない虚無な奴だ!とわかる。

ウェルベックは本当にこういう虚無な人間を描くのが上手い。

そのほかにも、大学を卒業してキャリアウーマンとなった女が、もう学生の身分には戻れず延々と働き続けることになると気づいて「絡め取られた」と回想するシーンなどは後悔とも言えぬ寂しい感情があふれていてよかった。

ウェルベック、わりと女を片付ける。

ストーリーとしては、ざっくり言って以下のような感じだ。*1

男は父の遺産でタイへツアーに行き、そこで出会ったプライベートで来ている女と意気投合し、彼女の旅行代理店の仕事を手伝うことになる。いろいろあって女と企画した買春ツアーが大成功し、幸せの絶頂でイスラム過激派のテロで女は殺される。

ここがまさに片付けられたなあという印象。

私はこんなふうに、ストーリーを進めるために現れ、じゃまになったから片付けられる登場人物がものすごくダメなのだ。特にこの女は、主人公の男に惹かれる説得力のある理由が全然描写されないのに、勝手に惚れて片付けられてしまう。男が虚無である描写はものすごくちゃんとしていて、こいつ性欲でしか人を見ていない!虚無だ!というのは本当に本当に上手く描けていて、そこが面白いぐらいだったのに、男が虚無であることがはっきりすればはっきりするほど、なぜそんな奴にこんなに知性のある女が惚れるのかわからなくなる。

結局女が死んでしまったあと、虚無男(こうとしかもう呼べない)は全ての気力を失い、何もできないまま死んでしまう。 あれだけ女と乱痴気さわぎを楽しんだ末に、女がいなくなった瞬間虚無のまま死んでしまうのだ。

虚無を描く作家としてのウェルベック

ただ、本当に虚無な人間を描く作家としてウェルベックは上手くて、そんなに簡単に虚無な人間が虚無じゃなくなることはできないし、そう簡単に人は救われないよなというのは異常にリアリティがある。虚無の描き方こそが、ウェルベックの面白さなのかもしれない。あまり好きにはなれない話だが。女が片付けられてしまうし。

ウェルベックはもっと歳をとったあとの作品、『ある島の可能性』を先に読んでいたが、この『ある島の可能性』のように、歳をとったあとの作品のほうが虚無にも凄みがあり、むしろエモさに転化していた。なにせこっちでは、虚無な男が書いた手記をその男のクローンが読み継ぎ、注釈をつけているのだ!ここまでくればかっこよさでしかない。

私は虚無を楽しむことしかできなかったが、読み込もうと思えば人間の肉体性についてなにか言えそうにも見えた。イスラームに関してもこの作品ではストーリ上無理やり現れたみたいな風に見えたので、そろそろ『服従』とか読みたいところ。

服従

服従

*1:ネタバレが有害な作品でもない。

身体が弱い私が試した健康になる方法4つ

身体が弱い。

どれぐらい弱いかというと8時間仕事をするだけで全てのやる気がなくなるぐらいだし、ついでにいうと精神も弱い!

だが身体が弱いからといって人生は容赦してくれない。

身体が弱くて得したことよりは諦めないといけなかったことのほうが多い。

なので最近は健康になりたい。

健康になりたい

といっても健康な人に健康になるにはどうしたらいいかと聞いても実用に堪える答えは返ってこない。なぜなら健康な人はだいたい何もしなくても健康だからだ。悩んだことがない人には少し難しすぎる問いというものだろう。

困ったときにはインターネットを使おう。まずは健康になる方法でググってみた。

日本語で「健康になる 方法」でググると、心構えや気合に関する記事がどんどん出てくる。(2016-08-11現在)

しかし気合を入れるにはまず健康で気力が存在する事が必要だ。気合が出せる時点でもうそいつかなり健康じゃないか。こんな願望じみた記事を読んで時間を無駄にする必要なんてどこにもないだろう。

英語でググるともうちょっとマシで、まともなものを食べろ!果物とか野菜をたくさん食べるんだ!運動も欠かせないぞ!瞑想をするのもいいな!あと裸足で外に出るといいよ!!!みたいな記事が出てくる。精神論みたいなものが全然出ないのが潔くていい。あと二つはハリウッドセレブの流行じみたものを感じるけれど、食事と運動は妥当な感じがする。もちろん日本の記事でもこの二つは出てくるが。

食事と運動が大事←わかる

健康になる方法として食事は欠かせないということはよくわかる。 けれども体力がない人は疲れて帰ってくれば食事を作る気もなくなるし、つい戦時中の料理みたいなものを食べて満足してしまう。*1

運動もそうで、運動を本当にしたことがない人は、下手に身体を動かすと体調を崩してしまうのだ!

食事と運動が大事と言われても困る人へ

ここで、わたしが健康になるために試したことで意味がありそうだったものを並べてみた。

他にいいものを知っている人が居たら教えてほしい。

ストレッチ

(これは女が仲良さそうでついでにストレッチの仕方も教えてもらえるいい漫画)

元水泳部だった同居人に教えてもらった。 下半身から上半身、首の順番にやるといいらしい。詳しくはググッてください。

お風呂上がりにやるといいかんじ。 気持ちいい気分はまだ良くわからない(痛い)けれど、 翌日の目覚めはいいので効いているんだろうと思う。

運動すると体調を崩す人はここからやるといいんじゃないか。

いいところ

  • 終わった後すぐ寝れる
  • 代謝が上がるらしい(よくわからない)

悪いところ

  • 痛い

アミノバイタル

アミノバイタル 30本入箱

アミノバイタル 30本入箱

粉薬みたいなパッケージに入っていて、水やジュースで飲む。

シャブと言われているだけあって、ほんとうに効く。すごい。寝る前に飲むとよく眠れるし、起きている時に飲むとすごく元気になる。

多分人間は何もしなくてもアミノ酸が不足しがちなんだと思う。

薬局にたくさん偽物が売っているが、この味の素のやつが一番美味しくて実際効く。プロやゴールドやら色々売ってるけど違いは正直わからない。タブレット状のやつもあるけど、粉薬のほうがよく効く気がする。

いいところ

  • おいしい。
  • 本当に飲んで30分ぐらいで元気になってくる。

悪いところ

  • あんまり安くない

お灸

せんねん灸オフ ソフトきゅう 竹生島 70点入

せんねん灸オフ ソフトきゅう 竹生島 70点入

一個買うとたくさん入っているしそんなに高くない。

関節や筋肉を触っていると冷たく感じる場所があるので、お灸に火をつけて適当にそこに置く。当たってたら暖かくて気持ちいいし、間違ってたら熱すぎるように感じるのではがせば良い。

せんねん灸のホームページの謎の充実具合がよい。

いいところ

  • いまお灸がアツい!と言って喜ぶことができる
  • 何が効いているかわからないけどコリがほぐれる

悪いところ

  • 煙たい
  • 気をつけないと服が焦げる

ラジオ体操

www.youtube.com

バカにする気持ちはよくわかる。

でもこれはよく効く。デスクワーカー向けに作られているのか肩と腰を重点的に動かすので肩こりと腰痛が良くなる感じがする。

いいところ

  • 学校とかでやってるので新しいことを覚える負荷が少ない。
  • Youtubeとかで見るとお姉さんの動きがキレッキレで真似したくなる。

わるいところ

  • 筋肉痛になる(痛い)
  • めっちゃダサい(仕方ないが)

それではみなさま良い健康を!

追記 酸素は一瞬効く

noubrain.hateblo.jp

*1:最近は同居人が増えて、美味しい料理を作ってくれるようになって調子がいい。でもどうやったら戦中残り物料理がまともなご飯になるのか未だにわからない。上の『台所に敗戦はなかった』という本を読んでみたら、戦時中でもわたしの作るものよりまともそうな物を食べていた

イラレでグリッドを作るさまざまな方法

illustratorで方眼状の形のパスを作りたいときがあると思います。 作り方によって、処理の重さや使いやすさが変わってくるので、用途に合った作り方をしていくといいです

(この記事は、わたしの書いた別のブログからの転載です。ブログを分ける意味が無いなと思ったのでこっちにも上げます)

基本1 方眼グリッド

gyazo.com

方眼グリッドツールを押して画面のどっかを押すだけ!!

利点

-サイズが指定できる!

-分割数も指定できる!

-等間隔ではないグリッドも作成できる!

弱点

  • 分割数を後から変えられない

  • 中身は四角形と直線なので、交点をなんらかの形で使いたい時に困る

例:スナップして欲しい、点線グリッドにして交点を+になるようにしたい、など

  • 四角形と円以外の形をつくるのは大変

基本2 直線や正方形をたくさん並べる

gyazo.com

作り方

  1. 直線(または正方形)をつくる

  2. 移動ツールで移動させたい距離だけ動かしてコピー(altを押しながらドラッグ、またはコピーにチェックを入れる)

  3. cmd+Dで同じ動きを繰り返し、好きなだけグリッドを伸ばす

  4. 直線の場合はコピーして90度回転させて完成

  5. 四角形の場合は同様の連続コピーをもう一度やって完成

利点

  • あとから拡大したり、伸ばしたり、削ったりの調整が簡単

  • 四角形で作れば、ちゃんと交点でスナップしてくれる!

  • 交点が+になってくれる点線グリッドも綺麗にできる!

弱点

  • 増えると表示が重い(ほんとうに重い)

基本3 パターンで作る

gyazo.com

チェック模様として欲しい場合はこれが最強

作り方

  1. 四角を書いてパターンにする
  2. 好きなパスの塗りにパターンを適用する

利点

  • 最も軽量で、方眼紙の大きさと容量が比例しない

弱点

  • ただの模様なので、スマートガイドは合わない
  • 正確に枠の中に入っている方眼は作りづらい
  • 拡大、縮小にツールの細かい設定が必要

応用 変形エフェクト+コピーを使用した方法

たくさん並べる方式の進化版。 とても軽量ですが、融通がグリッドツール以上に効きません。 目の数を正確にしたい場合に便利です。

作り方

  1. 直線(または正方形)をつくる

  2. エフェクト>変形 で、移動させたい距離とコピー数を設定

gyazo.com

gyazo.com

  1. もう一度変形をかけて、方眼状にして完成

利点

  • 実質オブジェクトひとつなので超軽い!最高!!

  • グリッドの数を増やすのが簡単

  • 正確に数値を入れられるので、ちょっとずれてて死亡という悲しい事故がない!

弱点

  • あとからサイズをいじったり角度を変えたりしづらい

  • グリッドごと拡大・縮小したいときは変形エフェクトをかけるか、拡大・縮小ツールを使う。

まとめ

一刻も早くグリッドを生やしたい →グリッドツール

グリッドを削って好きな形にしたいという願望がある →たくさん並べる方式

グリッドというかチェック模様がほしい  → パターンで作る

たくさんグリッドがあるファイルを作りたい →変形エフェクトを使う

それでは良いグリッド生活を!

吉増剛造展「声ノマ」を見に行った

吉増剛造の詩は難解だ。少なくとも、ふつうの文章を読んでいるときと同じ脳の部分を使っていては全然わからない。ただただ、ことばの疾走感とイメージの奔流にやられるしかない。 現代詩は全然わからないし、吉増剛造の詩もその例外ではない。

それでも、なにかわかりたくて展示に足を運んでみた。本当に暑い日だった。

一応予習はしていったのだが、何度読んでもわからないし、本当にはわからないんだろう、という気がしたまま行った展示だった。*1

声ノマ 全身詩人、吉増剛造展 | 東京国立近代美術館

展示は、日記、二重露光の写真、銅板、カセットテープなど音の展示、自筆原稿、映像、怪物くん生原稿、飴屋法水による怪物くんをモチーフにした空間、大野一雄とのコラボレーション映像と、9つのスペースに分かれていた。

現代詩の読み方

わたしは短歌は好きだけど現代詩が全然わからない。

いや、短歌だってわかるかというと分からないが、現代詩って言う物が本当にそれ以上にわからなくて、これは実は適当に書いているんじゃないか、それだったら意味ないじゃないか、(でも吉野弘は好き)みたいな感じだった。

少しわかるようになったのは最近で、これは意味に取り込まれる前の意味を書いているんだ、その勢い、空気、舌触りにひとまず流されればいいんだ、と気づいた。

それは短歌の読み方とあまり変わらなくて、ただ短歌のほうが定形だしその定形をいかに揺さぶるかで評ができるしわからなくても31文字だから繰り返し読める。 詩が読めなかったのはただ単に異質な言葉に乗る体力がなかっただけだった。

詩を書ける人は、むしろ短歌の定形に書かされている気がすると言って定形を嫌う人も多いが、そういう人は自分の中にビートがあるか、ビートを拒んでなお書けるからすごいと思う。

吉増剛造はすごくて、肉筆の原稿も、書いた後に絵の具まみれにされた原稿もあって、文体だけでなく、その書き方、書体までもを詩にしようとしていた。

50年前の日記という希望

日誌のエリアでは20代の日記帳から最近の70代の日記帳までずらっと展示されていたのだが、筆跡がかなり変化していた。

わたしはこの展示が一番好きで、生きていてもいいんだという気になった。本当に。

若いころはノートを大胆に使って、余白も多いし、まだ判読可能だった。 21歳ぐらいのノートには、(メモをとっていないので記憶で言ってしまっている、とっとけばよかった)詩を難解にする、詩を難解にする、意味に寄せすぎて詩はばらばらになっている、詩を難解にする!みたいなことが書いてあるし、28歳ぐらいは、体調が悪いとか、退職願の連発とか書いてあってとてもつらそう。

その後かなり間があいて34歳に飛ぶが、このあたりでかなり字が小さくなっていて、米粒ほどもない字で余白を埋めつくすようにびっしりと書くようになっていた。

これを見て、まず20代のつらそうな感じに、あまり他人事とは思えない共感をした。思考は辛い。仕事も辛い。日記に退職願の連発と書くほど辛い気持ちがよくわかってしまった。しかし彼は生き延びて、その日記を展示できるほど偉大な詩人となった。77歳ともなると28歳なんてもう50年も前だし、公開しても一ミリも恥ずかしくない過去なのではないか? この辛さも過去になり狂気スレスレの作品を生み出す(怪物君わけがわからなすぎてすごかった)疾走する70代になれる日が来るんじゃないか?これはもう希望なんじゃないか?

天才と自分を比べるのはおこがましい感じもするし、さすがにわたしは日記に「退職願の連発」みたいなパンチラインを書けてはいない。言葉との向き合い方もぜんぜん違う。でもやっぱり、これだけの人がつらそうな20代を送っていて、そしていまでも疾走しているというのは、安心するし、つらくても生きていていいんだなと思ったりする。

まとめ

他には音声のエリアで歌うような低い朗読があちこちで流れていて音がくすぐったかったり、映像が怖すぎたり、怪物くんの絵の具がべったりついた部分は奔放にやっているのかと思ったら、制作風景の映像ではかなり丁寧に少しづつ絵の具をぺたぺたやっていて、こっちの狂気の方が強いなと思ったり、生原稿ではマス目を完全に無視してもっともっと小さい字でびっしり書き連ねていたり。

見に行ったことでなにかわかったかというとそんなことはないし、わかるかわからないかで言うと全然わからなかったけど。謎の元気が出る展示会でとても面白かった。

*1:本当は佐々木中との対談が観たかったのだが、席が埋まってしまっていたのでそれは残念。