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知性がない

なけなしの知性で生き延びていこうな

8〜9月面白かった映画・本

最近 読書

最近は灰汁を食べたりしています

映画

シン・ゴジラ


『シン・ゴジラ』予告2

ゴジラ怖かった。 あまりにも圧倒的な破壊の元で人が逃げ惑う。一瞬だけ映るその人々は多分助からない。 罪のなさそうな一般人が犠牲になる、まさに災害という感じでやりきれない気持ちになった。

けれど官僚ドラマパートは、庵野秀明エヴァンゲリオンでもこんなのやりたがってたよね、パターン青、使徒です!の焼き直しだよなと思い、そこから進歩しているような感じはあんまりなかったので、絶賛されるほどではなかったかなあと思う。

ゴジラの部分の怖さだけで2兆点だけど、その他会議などのシーンはなんか役者が人形みたいで実写の意味をあまり感じなかった。だからエキストラの逃げ方ばかり印象に残る。ゴジラの破壊シーンやはじめにゴジラが火を噴いたときの絶望感だけでもみる価値があった。

大量のコピー機やキングジムのファイルが良く写っていたけど、スタッフロールにちゃんと載っていたのはよかった。

あと非常事態におばちゃんにお茶を淹れさせる運命を背負わせるのはそろそろもう飽きた。私は戦うおばちゃんが観てえよ。

ゴースト・バスターズ


映画 『ゴーストバスターズ』予告1

はい!来ました!戦う女!強い女!ダサくて仕方ないんだけどだからこそかっこ良さでしかなくなる!それがゴーストバスターズですね!!日本版の宣伝はかなりセンスがないので強い女が見たい人は広告を見ずに見に行くといいよ。たしかに完成度は微妙だしけっこうクソ映画なんだけど、主人公の女4人がそれぞれ強いし、個性も知性もあって、それで主体的にヤバイ敵に立ち向かうので最高なんですよ!!! 

なんでこんな当たり前みたいなことを褒めないといけないんだと悲しくはなるんだけど、とにかくそこがちゃんとしているので安心して観ることができる。

あとホルツマンがとにかく魅力的で、こいつはすごい社会不適合っぽくてすぐ変な武器をつくって喜ぶんだけど、そういう奴が仲間に囲まれて嬉しそうにしているところが見られてそれだけで幸せになる! あとしぐさがいちいちかっこよくてスクリーンに映るたびニヤニヤできる。

でも映画館で観るよりは夜9時ぐらいにテレビでやってて、人とピザとか食いながらわいわいしながら観たいかんじだった。たぶん騒ぎながらみた方が楽しい。

FAKE


映画『FAKE』予告編

けっこう前にみた。佐村河内さんのドキュメンタリー(これをみると「さん」をつけたくなる)なにがほんとうか、とか真実、とかいうものにさほど興味はなかったのだけど、これはもう見る側が真実を作り上げてしまうんだ、ということにかなり意識的で、編集もわかっててやっているなという感じ。

生きた人間は本当に魅力的で、佐村河内夫婦の静かな生活であったり、表情であったり、飼い猫の伸び縮みであったりが映像として現れると、やっぱり何か説得するような力を持っているように見える。確かに嘘をついているかもしれないし、そんなの誰にもわからないのだけど、この生活、表情、猫はほんとうなんだろうなあと思ったりした。

ここから本。小説ばっかり読んでるみたいだけど小説以外の本は読みかけのが多くて書けていないだけです。 『ニーチェと悪循環』とか『魔法使いの弟子』とかかなり面白かったけど、まだ書けるレベルまで読めてはいない。

カラマーゾフの兄弟 中

カラマーゾフの兄弟〈中〉 (新潮文庫)

カラマーゾフの兄弟〈中〉 (新潮文庫)

小説を読むのは全然得意じゃなくて、特に長編小説ともなると何度も中断するし、これも8度目ぐらいのカラマーゾフチャレンジなのだけど、今回はわりといい感じに読むことができている。

ドストエフスキーはほんとうにたくさんの文字を書くのが上手い。し、追いつめられた人間の心情をよく知っているんだなあと思う。極限状態の人間の支離滅裂の喋りをあれだけきちんと書けるのはすごい。圧倒された。いくら借金に追われ締め切りに追われても人はあんなのなかなか書けないよ天才かよ。

もっとも高潔な聖人のような人間と、ある意味それと対極となるような、女を取り合い金を盗み罪業を否認する人間と両方描いていて、人生が知りたいならとりあえず読めと言われるのも納得した。下巻も楽しみ。

侍女の物語

侍女の物語 (ハヤカワepi文庫)

侍女の物語 (ハヤカワepi文庫)

ちょっと未来のアメリカっぽい国で、女性差別的な政権が樹立し女性は自由に外には出られず男性の支配を受けるようになった……というディストピアもの。主人公の女はかつての自由だった頃を忘れられないし、その友達の強いレズビアンも、国外に亡命しようとあらゆる手をつくすが、みたいな話。ディストピアでの日常がいちいちリアルに書いてあるし、支配者となった男性も決して機械のようではなく、人間味があるように描かれるが、しかし人を平気で抑圧する!なんて愚かで、人間らしいんだ!

主人公も狂った世界で正気でいようとするし、謎の女性を救うという地下組織の存在も暗示されていて、けっこう分厚かったのだがわりと止まらない感じで読むことができた。疲れたけどね。

プレーンソング

プレーンソング (中公文庫)

プレーンソング (中公文庫)

これは保坂和志のデビュー作。これと言った事件は起こらず、あんまり頑張らずに働いている人の家に、その辺をぶらぶらしている人がどんどん転がり込んだりしてきて、4人で猫をみたりして暮らす、みたいな話。たしかになにも起こらないのだが、最後に四人で海に行くシーンがあって、そこで私は泣いてしまった。

保坂和志はエッセイもよく書いて、私はそのエッセイも好きなのだけど、そこではよく、文字を書くことの不安というものが語られる。まあそもそも文字に書いて残すと言うことが来るべき未来、忘却への不安からできているものだろうし、不穏な小説を書くのは簡単らしい。だからこそ、意識的に不安な感じを出さない小説を書いてみた、みたいなことを書いているのを何かで読んだ。そこで、こんなこと言ってる当人はどんな小説を書いているんだと見ていれば、確かに幸せそうなのだ。

不幸を描いた小説は数あれど、幸せな瞬間を描いた小説はそうそうない。多分この小説はそれに成功しているんじゃないかな。

次の街まで、きみはどんな歌をうたうの

次の町まで、きみはどんな歌をうたうの? (河出文庫)

次の町まで、きみはどんな歌をうたうの? (河出文庫)

横断歩道を三分の一ほど渡ったところで、犬とすれ違った。茶色い雑種だった。ちゃっちゃっちゃ、という爪の音が冷たい空気に響いた。それは心に残る音だった。(位置1334)

短編が二つ入っていて、情けない男が出てくるのと、よく眠る女が出てくるのがある。 出てくる人それぞれに味があって良い(なんと犬にまで味がある!) 大学の先生が、

「二十五までは、寝ますよ。眠いです。だけど二十五過ぎたら大丈夫ですから」(位置1136)

みたいなことを言ったりするのがとても良かった。

ギリシアの神々

ギリシアの神々 (ちくま学芸文庫)

ギリシアの神々 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: ジェーン・E.ハリソン,Jane Ellen Harrison,船木裕
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1994/07
  • メディア: 文庫
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ギリシアの壺絵や伝説を読み解きながら、ギリシア神話の神の起源を探る本。海の神のはずのポセイドンがなぜ雄牛に乗った姿で描かれるのか?という疑問から始まり、その起源はミノタウロスにあった!と鮮やかに暴きだす記述は圧巻。博識とかひらめきというのはこういう本を書くためにあるのだなと思う。めちゃくちゃ面白かったので来年ぐらいにもっかい読みたい。

なぜベケット

なぜベケットか

なぜベケットか

サミュエル・ベケットめちゃくちゃ好きで、わけわかんないながら泣きながら読むし、fail again, fail betterを唱えつつ日々生きているんだけど、この本はベケットが書いた本じゃなくてベケットについての本。たくさん写真がついていて絵本みたいに見れる。ベケットが何歳でこの劇を書いたという記述と一緒に、ベケットが監督しているときの写真や実際の舞台の様子の写真が見られるのでお得な気分になる。

緑の木々、鳥のさえずり、連れは親しい友人ばかり、空は美しい青空、というわけで、ベケットは大いにごきげんだった(とBBCラジオ・ディレクターのアイルランド人ジョン・ギブソンは追想している)。そこで友人の一人がこう言った。「まったく、こういう日には、生きててよかったという気がしてくるね。」するとベケットはこう応じた。「さあね、わたしには、そこまで言い切るつもりはないな」(5ページ)

こういうの見ちゃうとベケットこいつなんてめんどくさいやつなんだ最高!ってなる。